Rion Hiragi/Resercher/Storyteller

〜No.184 なぜ保険は入れるのに投資はできないのか〜

今日はまず、皆さんに質問をしてみます。

 

「ガン保険や生命保険に入るのと、株を買うの

どちらが抵抗がありますか?」

 

何百万、何千万も支払う保険には入れるのに

株やその他投資商品には二の足を踏む方、多いんですよね。

毎月3000円の掛け捨て保険には入れても

その額で投資信託の積み立てには踏み切れない方も、多いんですよね。

 

今日は、「なぜ保険は入れるのに投資はできないのか」について

行動経済学の視点から考えてみたいと思います。

 

結論から申し上げると

保険は「不安を売る商売」であり

そこに「流暢生・鮮明性・認知容易性(簡単にイメージできるか)

を加える事で、保険に入る敷居が低くなるのです。

 

例えば、次の2つの文章のどちらが

よりワクチンに対する危険性が高いと感じますか?

 

『死ぬ危険性のある伝染病から、子供を守るワクチン』について

 

1.永久麻痺のリスクが0.001%ある

2.接種した10万人に1人が、永久麻痺になる恐れがある

 

ほとんどの人が、2の文章を提示された時の方が

「ちょっと打つの怖いな」と思ったはずです。

どっちも同じ事を言っているのですが。

 

これは保険のパンフレットでもよく使われるテクニックです。

分母を無視して、相対的な頻度(◯回に1度、◯人に1)で表現し

よりイメージを想起させやすくします。

 

私達は、「分母」より「イメージ」を優先する動物で

【めったにない結果に対して

確率に見合わない過大な重み】をつけます。

 

 

例えば「30代の働き盛りでガンになる」というのは

確率論で言えば、健康な人の割合よりずっと少ないのですが

そういう事が起こる確率を、私達は実際より高く見積もります。

 

この「不安」をうまくつく情報をパンフレットなどに載せれば

客はどうしようもなく不安になるので

抵抗無く保険を買ってしまいます。

 

人間の脳には

「悪いニュース」を「良いニュース」より

優先的に処理するメカニズムがありますので

「病気」とか「死」といったネガティブな言葉を用いる事で

より潜在顧客の注意を向けさせる事が可能です。

 

 

私が個人的に保険嫌いなのは

「流動性(お金の出し入れのしやすさ)」が恐ろしく低い、というのも理由です。

 

例えば、生命保険は何十年に渡って何百万何千万と払う訳ですが

この間、解約すると違約金が発生します。

 

この資金を、投資に回したら効率良く資産を殖やせるとしても

そういうチャンスをすべてフイにしてしまうのです。

 

(第一、保険会社は死差益・利差益・費差益でもうかっているんだから

個人が得する訳がない)

 

保険が「万が一の時のサポート」というイメージを売るのに対して

投資というのはどうしても「ギャンブル」というイメージになりがちです。

 

投資は、「失敗した時のイメージ」に

過重な重みが付いてしまうんですよね。

 

加えて、「後悔」の心理も関係してきます。

「何もしなければ損しなかったのに、やったばかりに損を被った」時

私達は、自分の行動をより責めてしまうのです。

 

投資せずに現金でもっていればプラマイ0だったのに

投資して1万でも損したとすると

どうしようもなくガッカリするのはコレです。

後悔回避と呼ばれる心理ですが

これが嫌なので、投資に踏み切れない方も多い事でしょう。

 

私達の日々の行動は

「事実ではなく、思い込みによって制限・選択されている」

こう考えるだけでも、行動パターンが変わりますよ。

 

 

ちなみに

保険嫌いの私ですが

強制加入となる「火災保険」に特約を追加して

唯一入っているのが「個人賠償保険」です。

 

例えば、子供が自転車で相手を転倒させて重傷を負わせた場合など

何千万、1億といった賠償額が親に請求される事があります。

それをカバーする保険です。

 

私が加入している火災保険では

『日常生活賠償特約』という名称になっています。

ちなみに、入っていない場合は途中加入できないケースが多いので

その場合、一度解約して加入し直すか、

他の保険会社の火災保険などに

新たに契約する事になります。

掛け金も割安です。

 

 

参考文献:

『ファスト&スロー()』ダニエル・カーネマン 早川書房

 

 

 

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編集後記:

 

先日、朝日新聞の天声人語でガンジーの言葉が紹介されていました。

 

『明日死ぬかのように生きよ。

永遠に生きるかのように学べ』

 

目につく所に貼っておかねば! と思いました。