Rion Hiragi/Resercher/Storyteller

柊のメルマガ~No.98~正義は市場で勝つのか

皆様こんにちは。

 

「利潤追求とみんなの幸せの追求は両立するのか」

最近考えることがありました。

 

「感染予防薬ダラプリムの薬価が

一人の男によって一晩で11600円→9万円に跳ね上がる」

というニュースを最近見たからです。

 

去年結構話題になったそうなのですが

わたし、恥ずかしながら先週初めて知りました。

 

 

概要です:

 

元ファンドマネジャーのマーティン・シュクレリ(32)

ダラプリムという薬の製造・販売権を買収後

1錠の値段を5000%値上げし、19万円へとつり上げました

 

この薬は発売から60年以上経っている薬で

免疫力が低下したHIVやがん患者が使用しています。

ただ市場規模が米国で10万人ほどなので

一社だけしか製造販売していなかったそうです。

 

この独占販売で一儲けしようとしたのがシュクレリなのですが

余りに非道徳的なので、「アメリカで最も嫌われている男」

という吊るし上げを喰らいました。

 

ヒラリー・クリントン氏や

あのドナルド・トランプ氏までも

この便乗値上げを厳しく非難。

 

「大もうけできる」と語っていたシュクレリは

上院委員会に召喚されました。

(他にも証券文書偽造もやっていたようです)

 

ここで登場してきたのが

インプリミス製薬という会社。

 

シュクレリが高い値段で販売する前に

買収前の値段を大きく下回る「11ドル」で

この薬を提供する事を発表したのです

(それでも利益が取れるのだとか)

 

この英断に、患者からは賞賛の声が上がりました。

2015の夏には、ナスダック市場取引の開始ベルを鳴らす

栄誉にも預かっています。

 

米国はとにかく薬が高い。

処方箋の薬代はこの3年で二桁高騰しています。

 

ここにきてインプリミス社のモットーは

「困っている患者達に手頃な価格の薬を届ける」

ことだそうです。

 

調べてみたら、ここの会社は薬価を下げることに

とても尽力しているようですね。

 

http://www.wsj.com/articles/a-new-prescription-for-lower-drug-prices-1453767509

 

これは、インプリミス社の薬を買いたくなるのが人情です。

 

利他的行為と利潤追求は両立しないように見えますが

特に医療は「開発者や販売者のポリシー」が利益を生む元だと感じます。

 

ノーベル賞を受賞された大村智教授は

開発した「イベルメクチン」の商用利用で得られる

特許ロイヤリティの取得を放棄し

無償配布に賛同したため10億人を救ったと言われます。

 

それでも受け取った特許料は250億円以上ですが

これらのほとんどが北里研究所の運営や病院の建設

美術館の建設などに使われています。

 

この巨額をもたらした元の理念を考えれば

シュクレリのように「利ざやを稼ぎたい」ではなく

「自分の研究で困っている人を助けたい」

という理念や正義感ですよね。

 

そうでなければ砂漠の中から1粒のダイヤを見つける様に

あちこちの土を採取する研究なんて続けられません。

 

今から時代を遡ること120年。

北里柴三郎は、ノーベル賞候補になるほどの成果を上げていましたが

欧米からの招聘に応じず「日本の伝染病を撲滅する」

という理念を持ち、帰国し伝染病研究所を設立しました。

 

その後、戦争が始まり施設が国策で国有化されることになって

甘い水で誘われるのですが

「国策の下では必要な研究ができない」

と言って、辞職して自分で研究所を作ったのです。

 

その思いに共感した弟子や職員達も一緒に辞職し

研究に没頭した結果

狂犬病、発疹チフス、赤痢など次々と成果を上げました。

 

インプリミス社、大村教授、北里柴三郎などを見て思うのは

本当に利益をもたらすのはその人の「正義に基づく信念」で

そうでないものは、時間はかかるかもしれないけれど

淘汰されていくのではないでしょうか。

 

今潰されている企業

上場後最高益を出している企業を鑑みてください。

 

幕末の英雄たちに多大な影響を与えた

佐藤一斎は、「言志四録」でこう言っています。

 

「仕事をする場合は

 天に仕えるといった謙虚な気持ちで行うのが大切で、

人に自慢しようといった気持ちがあってはならない」

 

人の欲望がうずまく市場においても

最後に勝つのは「正義に基づいた理念」

だと思うのです。