世の中の子育て本で
「ほめ方」をレクチャーするものは数多くあります。
「意識的にほめて」親が期待するのは
「子供に自信を付けて欲しい・自尊感情を高めてあげたい」
という事ですね。
これは効果的な面もあるのですが
実は「ほめ方」も一歩間違うと逆効果になる場合があります。
親の期待に応えようとして無理をしたり
自分より”劣る”友達を卑下したり
逆にほめられないと自信をなくしてしまったり……。
加えて子供も小学生にもなると
「本当はそんな事思ってないくせに!」
と痛い所を突いて来たりします。
なので今回は「大人がほめるコツ」ではなく
「感謝してもらえる経験を子供に積ませる」
大切さについて解説します。
簡単にできる一つのアクティビティとして
「子供のお小遣いの中から、自分が決めた金額を募金してみる」
というのもあります。
先週娘(8歳)は学校から
赤十字の「寄付」のお手紙をもらってきました。
去年までは親である私がいくらか持たせていたのですが
今年は「あなたのお小遣いから寄付してみたら?」
と提案してみました。
すると娘は「え!?……あ、自分が出すならしない!」
と言い出したのですが、しばらく考えて
「募金したら、困ってる人が嬉しいかな?……やってみる!」
との事。
「金額も自分で決めていいんだよ」というと
ここでもしばらく考えて
「20円」を寄付する事にしました
(ちなみにうちでは、お風呂掃除を2回すると20円になります)。
募金を提出して来た日に
感想を聞いてみました。
すると「お小遣いが減って残念だけど、人の役に立てて嬉しい!
だからやって良かった」との事
(ちなみに全体が10だとすると、
お小遣いが減ってちょっと残念なのが3で、
嬉しいのが7だそうです)。
「人の役に立てている」「感謝してもらえた」という経験は、
お金では買えないとても大切なもので、
小さいうちだけでなく思春期、また大人になってからも
自尊感情を向上させるのにとても大きな影響を及ぼします。
阪神淡路大震災では、こんなエピソードもありました。
当時大阪で飲食店経営をしていた50代の女性は
生まれ故郷である神戸市東灘区(激しく被災した地域です)に
何とか支援物資を届けようとしました。
しかし当時、交通網は至る所で断ち切られていたのです。
そこで女性は
店の前でタムロしていた暴走族の若い子達にこう言いました。
「あんたら!わけもなく走ってんのやったら、
バイクにこの荷物を積んで、神戸の被災地に運んであげて。
ガレキだらけでも、あんたら若い子のバイクやったら行けるはずや。
行けるところまでバイクで行って、
アカンかったら、足で歩いて届けて!」
すると驚いた事に
その暴走族の子たちが「うん、分かった」と言って
それから毎日毎日仲間も連れて来て
支援物資をバイクに積んで運んでくれたそうです。
荷物を運んだ彼らの言葉を紹介しましょう。
「俺、生まれて初めて人に感謝されてん。
被災者の人らな、自分らが大変やのにな
『兄ちゃんら、事故せんように気ぃ付けて帰ってや。
ありがとうやで』って
こんな俺らにな、何回も頭下げてくれんねん」
その後、彼らはすぐ暴走族を辞め、仕事を始めました。
その中のリーダー格の男の子は、三軒も店を構える美容師になったとか。
なぜこんな事が可能なのかというと
その理由の一つが寄付やボランティアといった
「利他的行為」をすると「オキシトシン」
という神経伝達物質の分泌が促されるからです。
オキシトシンが豊富な血液を持つ子供は好奇心が旺盛で
経験したことのない状況に遭遇してもさほど怖がらず
情動面での立ち直りも早くなります。
また前頭前皮質(脳の司令塔です)の発達が促されるので
行動する前に考え、ひいては成績の向上につながり
職業を選択する時の能力に自信を持てるようにもなります。
ちなみに、京都大学大学院の鈴木智子氏によると
寄付した直後に幸福度が上がるというよりは
むしろ
「過去の自分の善行を思い出す」事で
幸福感を得られるのではという事です
(ボランティア行為も然りでしょう)。
つまり
親が言葉尻を考えて子供をほめるよりも
定期的に人に感謝してもらえるような経験を積ませ
それについてお互い語り合った方が建設的だ
と言えるでしょう。
参照:
『なみだのラブレター』ヨシモトブックス 橋本昌人
『愛は科学物質だった!?』ヒカルランド スーザン・クチンスカス
第4回日本ポジティブサイコロジー医学会学術集会 教育講演『寄付と幸福感』 鈴木智子(京都大学大学院経営管理研究部)資料
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編集後記:
今月から来年発売される本の執筆を始めています。
ここに至るまで、今回は色々なストーリーがありました。
まさに、「叩けよ、されば開かれん」を痛感した数ヶ月。
ヘロヘロになって開かれた感があります。
迷うくらいなら、取りあえずドアを叩いた方が絶対に道は開けますね。
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